満ちた月の夜に ~月猫りりの話~
もう4~5年も前になるだろうか。
おいちゃんがアメーバピグで、釣りゲームやらカジノやら、
広場で女の子のアバターとお喋りだとか、
たわいもない遊びに興じていた頃に出会った、
「妖」としか表現しようのない朧に煌く才能。
音楽とオヤジと赤ワインをこよなく愛し、
流れ着いたスペイン、アンダルシアで、夜な夜なワインの海に溺れながら、
月を見上げて澄み切った言葉をつむぐ猫のような女…
月猫りりのことは、記憶の片隅に残ってはいたんだ。
何かの拍子に数年ぶりでアメーバにログインして、
まだ読者になったままでいた彼女のブログを訪問してみた。
最終更新が2015年、もう書いてはいないようだったが、
読んでいない記事をちょっと覗いてみた。
ただそれだけなのに…
一瞬にして彼女の描き出す妖しい世界に惹き込まれ、
蜘蛛の糸に絡めとられた虫のように
身動きひとつとれなくなるおいちゃん。
重ねた屁理屈が無に帰する瞬間。
正論も常識も、いや目に見え手で触れられる動かぬ証拠でさえ、
一切の武器になり得ないあの世界。
歳を経て、少しは地に足が着いたと思っていたのに、
ともすれば蘇るこの感覚…
湿ったまとわりつくような生暖かい大気の粒子に包まれて、
どこまでも堕ちていく破滅への底知れぬ欲望が、
今も自分の心のどこかに厳然として在る。
”満ちた月の夜に” 月猫りり
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